ゴム材料の一般的な性質についてご紹介します。ゴムは代表的な高分子材料の一つですが、高分子材料の定義は、低分子の化合物(モノマー)が多数個(一般には、n個と表現します)結合して、分子量が10,000以上になった巨大分子の化合物をさしますが(表1)、実際には分子量が10,000以下であっても、高分子としての性質を示す化合物であれば、高分子材料として扱われています。
表1.分子量の違いによる分類
分子量 | 分類 | 具体的な例(かっこ内は分子量) |
---|---|---|
1,000以下 | 低分子 | 水(18)、スチレン(104)、ブタジエン(54)、塩化ビニル(62.4)、エチレン(26)、加硫促進剤、硫黄、充填材、顔料 など |
1,000~10,000 | オリゴマー分子 | 合成樹脂の製造中間体、再生ゴムの製造中間体 ゴムや樹脂の分解物 など 1万~ 合成ゴムの生ゴム(全般)、素練りをした天然ゴムの生ゴム、プラスチック(全般) |
10,000以上 | 高分子 | 100 万~ 天然ゴムの生ゴム→加工には素練りによる分子量ダウンが必要 100 万~ 200 万 超高分子量ポリエチレン→加工が非常に難しい |
架橋ゴムの弾性変形
ゴムは金属やガラスなどの他の材料には見られない“弾性変形”できる材料です。これは分子レベルでの動きによるもので、架橋ゴムで例を挙げると、からまった糸の何ヶ所かが結ばれていて、引張った時には少しほぐれて伸びるが、手を離してしまうと結ばれた部分があるので、元の形に戻ります。このように力をかけると変形して、力を除くと元の形に回復する性質を“弾性”といい、このような変形を“弾性変形”といいます。(図1の左側を見てください)
生ゴムの塑性流動
架橋ゴムの“弾性変形”に対して、生ゴムには架橋点がありません。ですから、からまった糸を引張ると、少しほぐれて伸びて、手を離しても戻りません。このような現象を“塑性流動”といいます。(図1の右側を見てください) ちなみに、一般のプラスチックの変形は、ほとんどが“塑性流動”です。
弾性と塑性は、ゴム製品に欠かせない性質です | ゴム製品は、架橋前の生ゴムの塑性流動を利用して、各種製品形状に加工し、熱と圧力などでゴムを架橋させます。製造された架橋ゴムは弾性を示し、いろんな機能を発揮します。このようにゴム製品は塑性流動と弾性変形の両方を利用して成り立っています。 |